英国のスポーツ支援に見る就労へのヒント

イギリスに見る障がい者スポーツの隆盛と就労へのヒント
近年、日本でもダイバーシティ&インクルージョン、略してD&Iへの関心が高まっていますが世界的に見ると、特に欧米諸国では障がい者の社会参加への取り組みが日本よりも進んでいる印象を持つ人は多いのではないでしょうか。中でもイギリスは、障がい者スポーツの振興において、世界をリードする存在と言えるでしょう。今回は、イギリスの事例から、障がい者スポーツの現状と、それが就労支援にどう活かせるのかを考えてみたいと思います。
イギリスは、パラリンピック発祥の地としても知られており、障がい者スポーツへの理解と支援体制が充実しています。ロンドンパラリンピック2012では、イギリスは金メダル獲得数で中国に次ぐ2位、リオデジャネイロパラリンピック2016、そして東京パラリンピック2020では、中国に次ぐ2位と、圧倒的な強さを誇示しました。この背景には、国民の障がい者スポーツへの意識の高さ、そしてそれを支える政府や各種団体の積極的な支援があります。
イギリスでの学校教育
イギリスでは、学校教育においても、障がいのある子どもたちがスポーツに親しむ機会が積極的に提供されています。幼少期からスポーツに親しみ、競技に取り組む環境が整えられていることで、競技人口の増加、ひいてはトップアスリートの育成につながっていると考えられます。また、大学などの高等教育機関でも、障がい者スポーツの奨学金制度が充実しており、経済的な負担を軽減しながら競技を続けることができる環境が整えられています。
競技力の向上だけではない!
こうしたスポーツへの取り組みは、単に競技力の向上のみを目指すものではありません。スポーツを通じて、障がいのある人々が自信をつけ、社会参加への意欲を高めることにも繋がっています。チームスポーツであれば、仲間との協力やコミュニケーション能力の向上も期待できます。これらは、就労においても非常に重要な要素であり、スポーツを通して培われた経験は、就労への大きなステップとなるのです。
スポーツから就労への一歩へ
例えば、Tさんのケースを考えてみましょう。Tさんは、幼少期からスポーツが好きでしたが、事故により下半身に障がいを負ってしまいました。一時は絶望し、社会との繋がりを断とうとしていましたが、リハビリテーションの一環として車いすバスケットボールを始めました。最初は戸惑いもありましたが、チームメイトとの交流や練習を通して、徐々に自信を取り戻し、社会復帰への意欲を高めていきました。そして、就労移行支援事業所を利用し、就職活動に取り組み、現在は企業で活躍しています。Tさんのように、スポーツが就労への橋渡しとなった例は少なくありません。
イギリスの事例からもわかるように、障がい者スポーツの振興は、単に競技力の向上を目指すだけでなく、障がいのある人々の社会参加促進、そして就労支援にも大きな役割を果たしています。就労移行支援事業所としても、スポーツの持つ力を積極的に活用し、利用者の社会参加、就労への意欲を高める支援に取り組む必要があるでしょう。例えば、事業所内でできる簡単な運動プログラムを実施したり、地域のスポーツクラブへの参加を促したりするなど、様々な取り組みが考えられます。
もちろん、障がいのある方々にとって、スポーツが全てではありません。しかし、スポーツを通して得られる経験や自信は、就労への大きな力となる可能性を秘めていることを忘れてはなりません。私たちは、一人ひとりの状況や希望に寄り添いながら、最適な支援を提供していくことが重要です。