学校コンサルで多い相談 ベスト3「指示が通らない」
学校コンサルテーションで特別支援学校の先生方から寄せられたご相談のうち、今回は以下のご相談に対して提案した内容の一部を紹介いたします。
~先生からのご相談 ベスト3~
第1位「指示が通らない」
これまでの相談の中でもっとも多いお悩みです。
・指示を出しても動き出さない
・指示と違うやり方で作業している
・指示をしたのに何度も同じことを聞いてくる、等々
学校生活において、先生の指示を聞いていない、見ていない(ように見える)生徒への対応方法に頭を悩ませているケースです。
そのような場合、生徒の特性に見合った指示の出し方ができているかどうかを確認する必要があります。生徒にとってわかりづらい指示を出していないか?現状の「指示」を以下のポイントでチェックします。

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①言語指示/視覚指示
言語・・・口頭での指示、文字で書かれた指示など
視覚・・・実演(デモンストレーション)、実物、写真、イラストなど
障害特性によっては、言語指示と視覚指示とで理解に顕著な差が表れる場合があります。また、知的障害や自閉症スペクトラム障害の代表的な特性として「視覚情報に強い(視覚優位)」が挙げられますが、視覚優位だからといって「イラストカード」を見せれば良いかと言えば、うまく機能しない場合があります。視覚情報の中でも、特にどういった情報に対する処理がスムーズなのか?をアセスメントを通じて確認する必要があります。
②固定的な視覚情報/流動的な視覚情報
固定・・・止まっている情報(マニュアル、指示書、サンプルなど)
流動・・・動いている情報(実演、映像)
視覚優位の特性をさらに細分化して考える場合の軸です。視覚情報が固定されているほうが良いか、それとも流動的なほうが良いかを検討します。体で表現すること(ダンスや模倣など)が得意な場合は、固定的な情報よりも流動的な情報を受け取りつつ自分の体を動かすほうが身に付きやすい、という例もあります。
③先行提示/同時提示
先行提示・・・全工程を先行して提示
同時提示・・・1工程ずつ提示と作業を繰り返す
先行提示は「先行モデリング」、同時提示は「同時モデリング」と呼ばれます。先行提示は全ての工程を一度に見せる提示の仕方です。一方、同時提示は記憶力や注意力・集中力に課題がある場合に有効で、指示と作業を1工程ずつ繰り返して提示し、指示内容を理解しやすく覚えやすくします。
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就労アセスメントでは①~③を含む、さまざまな指示形態で模擬作業を行ってもらいます。それを通じて、本人にとって分かりやすい指示、分かりづらい指示の傾向が見えてきます。
さらに、先生側が普段の指示を①~③のポイントで考えた場合、生徒にとってわかりづらい指示を出していたことに気づくことがあります。その場合は、就労アセスメントで整理した生徒の傾向を踏まえて、新たな指示方法を一緒に協議していきます。
沢山の生徒を受け持つ中で、一人ひとりの特性に見合った指示を的確に出すことは容易な事ではありません。ですが、生徒のスキルを伸ばそうと、できる限りの実践を試みてくださる先生方にはいつも頭の下がる想いです。
障害のある生徒に向き合う中での課題に対して、これからもチャレンジドジャパンの学校コンサルテーションは微力ながら貢献していきたいと考えています。