今さら聞けない?ソーシャルファームって一体なに?ソーシャルファームを理解する3つのポイント

こんにちは。就労移行支援事業所のスタッフです。
日々の支援の中で、私たちは常に「働く」ということの新しい形や可能性についてアンテナを張っています。障がいのある方が自分らしく、やりがいを持って働ける場所はどのようなところだろうか、と考える中で、最近よく耳にするようになった言葉があります。それが「ソーシャルファーム」です。
皆さんも、どこかで聞いたことがあるかもしれません。しかし、この言葉が具体的に何を指しているのか、はっきりと説明できる方は少ないのではないでしょうか。今回は、少しずつ広がりを見せているこの「ソーシャルファーム」について、その言葉の定義を整理しながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
「ソーシャルファーム」とは?言葉の定義が曖昧な現状
まず、日本の現状について触れておきたいと思います。
「ソーシャルファーム」ということばがあります。日本でも最近、流行語のように障害福祉の現場で使われつつありますが、定義が曖昧です。ですから、株式会社もNPOも、B型事業所も農複連携もなんでもかんでも「ソーシャルファーム」を経営していると放言できる無法状態です。少し整理したいと思います。
このように、様々な事業体が「ソーシャルファーム」を名乗っているのが現状です。働く場所を探している方々にとって、言葉のイメージだけで職場を選んでしまい、後から「思っていたものと違った」ということになっては大変です。だからこそ、言葉の本来の意味をきちんと理解しておくことが、ご自身のキャリアを考える上でとても大切になります。
ソーシャルファームを理解する3つのポイント
では、本来「ソーシャルファーム」とはどのようなものを指すのでしょうか。その定義を紐解くための、いくつかの重要なポイントがあります。
一つ目は、事業で得た利益の使い道です。
「ソーシャル・ファーム」は「社会的」と「会社」の英語和訳のカタカナ表記です。「ソーシャル」という英語には、利己的ではない→公共の利益を優先する、収益を寡占するのではない→還元する、というニュアンスがあります。そこで、第一の定義として、株式会社の経営者や株主が利益を「寡占」するのではなく、協同組合のように組合員へ「還元」することを標ぼうすることがあげられそうです。
つまり、一部の経営層だけが利益を得るのではなく、そこで働く従業員全体に、事業の成果がきちんと分配される仕組みを持っているということです。これは、働く人一人ひとりが事業の当事者であるという意識を育み、大きなやりがいに繋がる考え方と言えるでしょう。
二つ目は、どのような人が働くのかという点です。
第二の定義として、就労者の特色です。「就労困難者」の雇用になります。「就労困難者」とは「通常の就労が制限されている」方々という意味です。障がい者も含まれますが、障害だけが就労に対する制限ではありません。制度的な制限があります。たとえば元服役者。服役後に社会復帰を目指す方々ですが、雇用側の様々な懸念から就労が難しく生活困窮に陥る方々が少なくないそうです。また、母子家庭のお母さんも「就労困難者」に含まれます。
私たち就労移行支援事業所が主に対象としている障がいのある方はもちろんのこと、それ以外にも様々な理由で「働きづらさ」を抱えている人々を積極的に雇用するのがソーシャルファームの大きな特徴です。社会から孤立しがちな人々を、働くことを通じて包み込み、支え合う。まさに「ソーシャル(社会的)」な役割を担う企業体だと言えます。
そして三つ目は、その雇用割合です。
第三の定義として、「就労困難者」をどの程度受け入れるか、になります。少なくとも三割が一般的な指標のようです。
これは非常に重要なポイントです。単に数名の「就労困難者」を雇用しているというだけでなく、従業員全体の一定割合以上を占めることで、事業そのものが「就労困難者」の存在を前提として成り立っていることを意味します。特別な配慮が必要な誰かのための職場、ではなく、多様な人々が共に働くことが当たり前の職場である、という証左とも言えるでしょう。
ソーシャルファームの起源と日本のこれから
このような考え方は、どこから来たのでしょうか。
「ソーシャルファーム」はヨーロッパで盛んだそうです。1970年代イタリアの精神病院での取り組みがその起源だともされています。日本にも「考え方」が輸入されていますが、実際どうしたものかについては2025年12月現在百花繚乱です。
歴史を辿ると、ソーシャルファームは単なるビジネスモデルではなく、社会的な課題を解決するための実践の中から生まれてきたことがわかります。日本においては、まだその形が定まっていない「百花繚乱」の状態ですが、これは日本の社会や文化に合ったソーシャルファームのあり方を模索している、創造的な時期と捉えることもできます。私たち支援者も、この新しい働き方の動向に大きな関心を寄せています。
まとめ:あらためて「ソーシャルファーム」とは
ここまで見てきたことをまとめると、現時点でのソーシャルファームの姿が浮かび上がってきます。
インターネットを検索する限り、おおむね、利益を全従業員に還元する仕組みを持ち、就労困難者を雇用し、雇用率が従業員の三割以上を占めていることによって、はじめて「ソーシャルファーム」と言えるようです。
就労を目指す皆さんにとって、ソーシャルファームは非常に魅力的な選択肢の一つとなり得ます。そこは、様々な背景を持つ仲間と共に支え合いながら、事業の主体として活躍できる場所かもしれません。そして、自分の働きが会社の成長と、そこで働く仲間たちの喜びに直接繋がるという、確かな手応えを感じられる職場かもしれません。
もちろん、言葉の定義に当てはまるかどうかだけが、良い職場の条件ではありません。しかし、こうした新しい働き方の選択肢があることを知っておくことは、皆さんの可能性を広げる上でとても大切なことです。
私たち就労移行支援事業所では、これからも様々な働き方の情報を提供し、一人ひとりに合った就労の形を一緒に探していきたいと考えています。何か気になることや、相談したいことがあれば、いつでもお気軽にお声がけください。