アサーションで築く良い人間関係

良好な人間関係を築くコミュニケーションの秘訣
就職を目指す上で、また、就職後に職場で長く働き続ける上で、多くの人が大切だと感じるのが「人間関係」ではないでしょうか。業務の相談、意見交換、あるいはちょっとした雑談まで、仕事は人とのコミュニケーションの連続です。円滑な人間関係は、働きやすさに直結する重要な要素と言えるでしょう。
今回は、誰もが心地よく、そして自分らしくいられるような、良い対人関係を築くためのコミュニケーションについて考えていきたいと思います。
自分も相手も大切にする自己表現「アサーション」
良いコミュニケーションと聞くと、話が上手なことや、誰とでもすぐに打ち解けられる社交性をイメージするかもしれません。もちろんそれも素晴らしい能力ですが、もっと本質的で、誰でも意識することで実践できる考え方があります。それが「アサーション」です。
アサーションとは、ひと言でいうと「自分も相手も大切にした、誠実で対等な自己表現」のことです。私たちはコミュニケーションにおいて、つい自分の意見を我慢して相手に合わせてしまったり(受け身的な表現)、逆に自分の意見を一方的に押し通そうとしてしまったり(攻撃的な表現)することがあります。
アサーションは、そのどちらでもありません。自分の気持ちや考え、要求などを正直に表現しつつ、同時に相手の気持ちや考えも尊重する、というバランスの取れたコミュニケーション方法です。お互いを一人の人間として尊重し、対等な立場で対話することを目指す考え方なのです。
すべては自分自身を理解することから
アサーティブな自己表現をするための第一歩は、他の誰でもなく、まず自分自身を深く理解することです。なぜなら、自分が何を考え、何を感じ、そして相手に何を伝えたいのかが分かっていなければ、それを適切に表現することはできないからです。
嬉しい、楽しいといったポジティブな感情だけでなく、不安だ、悲しい、腹が立つといったネガティブに思える感情も、すべてあなたの大切な一部です。まずは「今、自分はこう感じているんだな」「こんなことを考えているんだな」と、自分の心の内側で起きていることに気づき、それをありのままに受け止める練習をしてみましょう。
自分の感情や考えに良いも悪いもありません。自分の心の声を丁寧に聴く習慣が、自分の意見の軸となり、自信を持って他者と関わるための土台を築いてくれます。
相手を理解しようと「聴く」姿勢
自分のことを理解できるようになったら、次は相手に意識を向けてみましょう。コミュニケーションは言葉のキャッチボールです。自分がボールを投げる(話す)ことばかり考えていては、相手がどんなボールを投げ返してくれているのか(話しているのか)を受け取ることができません。
ここで大切になるのが、相手の話をただ聞くのではなく、「理解しよう」という姿勢で聴くことです。これを「傾聴」と呼びます。相手が使っている言葉そのものだけでなく、その表情や声のトーンから「なぜそう言うのだろうか」「どんな気持ちで話しているのだろうか」と思いを巡らせてみてください。
適切な相槌を打ったり、内容を確認する質問をしたりすることで、「あなたの話を真剣に聴いていますよ」というメッセージが相手に伝わります。この姿勢が、相手との間に安心感と信頼関係を育むのです。
より良い人間関係のために、一緒に練習していきましょう
アサーションは、生まれ持った才能ではなく、練習によって誰でも身につけることができるスキルです。初めは難しく感じるかもしれませんが、日々の小さなコミュニケーションから意識することで、少しずつ自分らしい表現の仕方を見つけていくことができます。
例えば、何かを頼まれたときに、ただ断るのではなく、「申し訳ありません。今は別の作業をしているので難しいですが、〇時以降でしたらお手伝いできます」といったように、自分の状況を正直に伝えつつ、代替案を示すのもアサーションの一つです。
私たちの事業所では、こうしたコミュニケーションスキルを実践的に学ぶためのトレーニングプログラムを用意しています。ロールプレイングなどを通じて様々な場面を想定し、安心して練習を重ねることができます。良い対人関係を築くことは、あなたの働きがいや生活の質を大きく向上させてくれるはずです。私たちと一緒に、一歩ずつ学んでいきませんか。