指差し確認で、うっかりミスにさよなら

仕事のミスを劇的に減らす!「指差し確認」
仕事に慣れてきた頃に、ふとした「うっかりミス」をしてしまい、落ち込んだ経験はありませんか。「何度も確認したはずなのに、どうして…」と、自分を責めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。このようなヒューマンエラーは、誰にでも起こりうるものです。大切なのは、ミスが起こりにくい仕組みを自分自身で作ることです。今回は、そのための非常に有効な手段である「指差し確認」についてご紹介します。
指差し呼称とは何か?
「指差し呼称」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。駅のホームで、運転士さんや車掌さんが線路や信号を指で差し、「出発進行、ヨシ!」と声に出して確認している姿を見かけたことがあるかもしれません。あれこそが、指差し呼称です。これは、確認すべき対象から目を離さず、指で差し、さらに声に出して確認するという一連の動作を組み合わせた安全確認の手法です。
ただ目で見るだけの「黙読」に比べ、身体の複数の感覚器(視覚、触覚的な動作、聴覚)を同時に使うことで、脳を活性化させ、注意力を格段に高める効果があります。古くから鉄道業界や建設現場、製造ラインなど、ほんの些細なミスが大きな事故につながりかねない職場で実践され、その効果が実証されてきました。
なぜ指差し呼称はミス防止に効果的なのか
では、なぜこの一連の動作がミスの減少につながるのでしょうか。それは、人間の脳の特性と深く関係しています。私たちは普段、多くの物事を無意識的、あるいは半ば自動的に処理しています。そのため、毎日繰り返している作業ほど「いつも通りやっているはず」という思い込みが生じやすく、注意が散漫になりがちです。ただ目で見るだけでは、実際には見ていなかったり、違うものを見ていたりしても、脳が「見たつもり」になってしまうことがあるのです。これがヒューマンエラーの大きな原因となります。
しかし、指差し呼称を行うことで、この「つもり状態」から脱却することができます。対象を指で差すという明確な身体的アクションは、脳に対して「今からこれを確認するぞ」という強い指令を送ります。さらに、確認事項をはっきりと声に出すことで、自分の耳でその内容を再確認することになります。つまり、目、腕、指、口、耳といった身体の様々な部分を動員することで、意識のレベルを飛躍的に引き上げ、確認作業への集中力を高めるのです。ある研究によれば、指差し呼称を実践することで、何もしない場合と比べてエラーの発生率が大幅に減少するという結果も出ています。確認の精度を向上させ、作業への意識を高めることでミスを減らす、非常に合理的で有効な手段なのです。
指差し呼称の基本的なやり方
指差し呼称のやり方は、決して難しいものではありません。基本となる動作をご紹介します。
まず、確認したい対象物を、正面に立ってしっかりと目で捉えます。次に、その対象に向かって右腕(または左腕)をまっすぐに伸ばし、人差し指でピシッと指します。そして、「〇〇(確認内容)、ヨシ!」というように、確認する項目をはっきりと声に出して唱えます。唱えながら、指差した指を自分の耳の横まで振り上げ、自分の声と対象物を再度認識します。最後に、確認が完了した証として、力強く「ヨシ!」と再度唱えながら、振り上げていた腕をまっすぐに振り下ろします。この一連の動作を、一つの儀式のように行うことがポイントです。このリズミカルな動作が、注意力を高め、確実な確認へと導いてくれます。
日々の業務や生活に取り入れてみよう
私たちの就労移行支援事業所でも、この指差し呼称を様々な訓練に取り入れています。例えば、パソコンを使ったデータ入力の訓練では、入力するファイル名や保存先フォルダを指差し呼称で確認します。また、事務作業の訓練では、書類を封筒に入れる前に宛名と中身が一致しているかを指差し呼称で確認します。最初は少し照れくさく感じるかもしれませんが、実際にやってみると、その効果は絶大です。ミスが減ることで作業の正確性が上がり、自信にもつながっていきます。
この指差し呼称は、職場だけでなく、日常生活の様々な場面でも活用できます。家を出る前の「ガス元栓、ヨシ!」「窓の鍵、ヨシ!」、就寝前の「玄関の鍵、ヨシ!」など、習慣にすることで、日々の暮らしの安心感を高めることができます。
仕事でのミスに悩んでいる方、もっと確実に作業を進めたいと考えている方は、ぜひこの指差し呼称を試してみてはいかがでしょうか。シンプルながらも、あなたの仕事の質を大きく変えるきっかけになるかもしれません。