12月はデンマーク中がクリスマスを迎える喜びに溢れます。「アドベント」はクリスマス前の4回の日曜日を含む期間を指し、クリスマスを迎える準備を行い、クリスマスらしい行事が続きます。街中、そして、家々がクリスマスの雰囲気に包まれ、ショッピングや忘年会、観劇、音楽会に向かう人々で賑わいます。

 

 

 

 

「チボリ」もクリスマスの雰囲気で溢れんばかりです。冬至が近づく頃には午後3時過ぎから暗くなるので、クリスマスの照明がよく映えます。かわいらしい小屋が目抜き通りや中央広場にいくつも並び、シナモンの香り高いアーモンドの砂糖がらめ、クリスマス・スパイスが効いた温かい飲みもの「グルッグ」やクリスマス・グッズなどが売られています。

 

 

 

 

 

 

 

 

たこ焼きを一回り大きくしたようなコロコロ・ワッフル「エーブルスキーバ」はデンマークでは中世の頃から伝統的に作られている一品です。今はクリスマスらしいおやつの定番として扱われ、「チボリ」でも高い人気です。レストランでは、デンマークの伝統的な午餐で「スモーブロ」と呼ばれるオープンサンドイッチの数々をクリスマス仕立てで楽しむことができ、夜には、メインにロースト・ポークや鴨肉に紫キャベツの甘酢煮、じゃがいもという組み合わせ、デザートに米のミルク煮とアーモンドのホイップクリーム和えにチェリーソースというデンマークらしいクリスマス料理が用意されています。デンマークでは、クリスマスイヴ、第一クリスマス、第二クリスマスが日本の正月三ヶ日のような位置付けで、親族揃っての晩餐や午餐など、自宅で伝統的なクリスマス料理を楽しむ家庭が大半なのですが、アドベントにも家族や親しい人とクリスマスらしい料理を楽しみます。

 

 

 

 

 

「チボリ」では、毎年12月、「チボリ・コンサートホール」で、デンマーク王国元首であるマルガレーテ二世女王陛下の意匠によるバレエが公演されます。2018年までは「くるみわり人形」でしたが、2019年からは童話作家アンデルセンの作品「雪の女王」が上演されています。今年の初日には、皇太子陛下ご家族がご臨席になり、意匠をご担当になった女王陛下は幕が閉じた後、出演者や指揮者とともに舞台からご挨拶をなさっていました。デンマークのバレエはパントマイムの要素が取り入れられ、脇役にも細々した楽しい振り付けがあることが多いのですが、「チボリ」でのバレエ鑑賞は、多くの人々が家族連れで楽しみにしているクリスマス行事の一つです。

© Tivoli
© Tivoli

 

 

10月から新編成で練習を重ねてきた「チボリガード」の演奏パレードも毎週末13時と15時に行われます。15時のパレードは既に薄暗く、美しい照明で飾られた園内を楽しむ人でとても混雑します。気温は零度前後、楽器そのものも良い音が出しにくい上、指なし手袋から出た指先が寒さでかじかむ中での演奏です。混雑する中のパレードはなかなか難しいようですが、クリスマス音楽が盛り沢山のパレードは、クリスマスの雰囲気を盛り立てます。

 

 

 

 

12月13日は、キリスト教の聖人「聖ルチア」を祝う日で、北欧そしてイタリアなどでのクリスマスらしい伝統行事です。太陽暦が導入されるまで、聖ルチアの日は冬至にあたりました。北欧では、古来、太陽の力は一年で最も日が短くなる冬至を境に再び甦ると考えられていました。「聖ルチア祭」では、白い衣装を纏った少女が聖ルチアに扮してキャンドルを灯した冠を被り、手にもキャンドルを持って行列の先頭を歩き、お揃いの白い衣装を身につけ、手にキャンドルを持った少女たちと一緒に、ナポリ民謡『サンタルチア』のメロディーに合わせて、聖ルチアと光を愛でる歌を歌いながら行進します。キャンドルの光は、生命力の象徴とされる火や太陽を意味します。暗闇の中にキャンドルの灯りと少女の白い衣装がゆらめき、灯りそして命を愛でる歌が少女たちの声で歌われる光景は、とても厳かで神秘的です。「聖ルチア祭」は教会や学校などでも行われる行事ですが、「チボリ」にも大勢の人々が集まります。冬至は太陽の恵みや命の息吹を感じる春や夏に向かう第一歩。北欧の人々にとっては、この日を境に少しずつ日が長くなることにとても大きな意味があるのです。

 

 

 

 

 

「チボリ」の中央に位置する広場は、園内で催されるイベントの心臓部とも言えるスペースです。クリスマス開園では、屋台や子ども用のアトラクションが盛り沢山ですが、夏半期には、著名なロックスターの出演で人気が高い週替わりのプログラム「金曜日ロック」、小さな子どもを持つ家族に圧倒的な人気を誇るキャラクター「ラスムス・クルンプ」とその仲間たちによるショーなどの様々なイベントが催され、大勢の観客で賑わいます。

 

 

 

 

この中央広場とコンサートホールの間には、古典的でフォトジェニックな空中ブランコ、そして、道を挟んだところには、風船をモチーフにした観覧車があります。この風船型の観覧車は、デンマーク観光が世界的なブームになった1960年代、火付け役となった映画に使われたことで有名です。どちらとも観光目的の広告デザインなどに繰り返し使われているため、デンマークと「チボリ」を象徴するアトラクションです。チボリを訪れると必ず乗るという人々が多くいることでも知られています。

 

 

 

 

今年、12回に渡ってデンマークを代表する文化施設「チボリ」とそこでのヒュッゲの形をご紹介してきましたが、今回が最終回です。海外への旅行が難しい時世ですので、少しでもお伽の国「チボリ」に旅した気分を味わっていただけていれば嬉しく思います。

 

 

 

最終回にご紹介する曲は、「チボリガード」に所属する「鼓笛隊」「鉄砲隊」「吹奏楽隊」三部隊総勢で演奏する『1000曲目のマーチ』です。1844年創設の少年少女音楽隊では、これまでに演奏した曲に全て番号がついているのですが、この曲はNo.1000の記念すべき曲です。王立近衛兵吹奏楽団の主任指揮者としても活躍する作曲家デイヴィットM. A. P. パルムクエスト氏の作品です。

 

 

最後に「チボリガード」でのパレード終了時に演奏する曲『ステップ・ダウン』をご紹介して、一年の幕を閉じたいと思います。吹奏楽隊と鼓笛隊の太鼓メンバーのみで演奏するたった二小節の曲ですが、デンマークで一日の兵役終業の合図に使われてきた歴史を持っています。

 

 

一年間のご高覧、どうもありがとうございました。

 

Foto: Jan Oster  チボリマップ © Tivoli

執筆:くらもとさちこ

広島県出身。コペンハーゲン在住。

30年近くのデンマークでの暮らしの中で、幅広い文献に目を通し、北欧の食文化と「ヒュッゲ」への造詣を深める。デンマークの高等教育機関で健康と栄養の学位を取得後、料理講座の主宰、法人・教育機関で食育や献立に関するアドバイザーを務める。近年は、デンマークの文化や暮らしを日本に紹介する活動を行っている。

 

<ご案内> インスタグラム@tivoli.og.tivoligardenで「チボリ」と「チボリガード」の折々の様子をご紹介しています。また、www.kuramoto.dk および @sachikokuramoto.dkでは、デンマークの暮らしや食べごとについて投稿しています。フォローやメール登録で応援していただけると励みになります。よろしくお願いいたします。